【おうちづくりコラム】家づくりの現実

「昔は1,500万円~2,000万円ぐらいが住宅ローンの相場だったけど、
この頃は、相場だと4,000万円ぐらい借りるのが当たり前になってますね。
年収の5倍ぐらいと言われていた融資の限度額も
下手をすれば7倍ぐらいまで貸すこともありますしね。」
 
先日、とある銀行の方からこのようなお話をお聞きしたのですが、
確かに原材料費高騰の影響もあって
どんどん値上がりする家の価格を考えると、
土地から買って家を建てる方は、
自己資金がなければそれぐらいの借り入れになってしまうのかもしれません。
 
しかし個人的には、たとえ共働き世帯だったとしても、
会社勤めである方たちにはこの予算設定はオススメ出来ません。
返済していくだけで精一杯の状態になる可能性がかなり高いからです。

27260205_s.jpg

例えば、4,000万円のうち3,000万円をベタ払いで、
1,000万円を年2回のボーナス払いにし、
35年返済で1.4%の固定金利で銀行から借り入れしたとしましょう。
 
この場合、毎月の返済は90,392円となり、
年2回のボーナス返済は181,193円となるのですが、
仮に現在の家賃が70,000円だとしたら、
出費が今よりも20,000円も上がってしまうことになります。
 
また、賃貸では火災保険を自分の家財にのみに掛けておけば良かったのですが、
家を持つと建物本体にも火災保険を掛けることになるし、
それにプラスして賃貸の時は必要なかった
固定資産税を毎年払わなければいけません。
 
さらに、家をいい状態で維持していくためには、
定期的に家のメンテナンスをしないといけないのですが、
そのための費用も今のうちからコツコツと積み立てていかないといけないし、
同時に、やがて老朽化し入れ替えが必要となる
水回りの工事費用も積み立てていっておくべきです。
 
そしてこれらを合計すると、
毎月約20,000円~25,000円ぐらいは必要となってくるわけですが、
さて、現在暮らしよりも一気に40,000円~45,000円も
負担が上がるとしたらいかがですか?
 
✔️ボーナスはずっとあるのか?
22950429_s.jpg

そして私が一番懸念するのは、
「ボーナスがずっとあるのか」というところです。
ボーナスというのは
給料と違い企業の業績に応じて支払われるものであるため、
今後35年間良い業績がずっと続くかどうかなんて
現時点では誰にも分かりませんからね。
 
そして、仮にボーナスがなくなるという事態が起こってしまった時は、
(業績悪化や転職といった要因によって)
年2回分のボーナス上積み分を毎月除けていかないといけなくなります。
 
となると、さらに毎月の負担が高くなり、
とてもじゃないけど家族で旅行に行く余裕なんて
全くなくなってしまうのではないでしょうか。
 
✔️贅沢な暮らしを諦める覚悟
26861597_s.jpg
 
これは銀行の方が話していたことで私も同感なのですが、
家にこれだけのお金をかけるつもりなのであれば、
家以外のことを「ずいぶんと我慢して暮らす覚悟」が必要だと思います。
つまり、贅沢はしないということです。
 
例えば、外国車や高級車といったいわゆるいい車は絶対に買わないとか、
基本的には外食には行かないとか、
旅行に行くのは年1回にしてその旅行も泊まりでは行かないとか、
あるいは行き先を飛行機に乗らなくて良い場所にするとか、
時計やバイクのほか、お金がかかる趣味は全て諦める、といった感じですね。
 
理由は、子供たちを育てていくためには想像以上にお金がかかるから、
そして、今後は天引きが増えるため、
よほど給料が上がらない限りは確実に手取り金額が減っていくから、
でも、そんな中でも老後に向けて積立もしていかないといけないから、です。
(年金はなくならないにしても支給が遅れたり減ることになるからです)
 
これから35年間、つまり住宅ローンに縛られている間、
ずっとそれでも我慢出来ると断言出来るのであれば、
家に全身全霊を捧げてもいいと思います。
 
しかし、それはちょっと嫌だなーとお考えだとしたら、
家づくりの予算をもっと現実的に考えるべきだし、
もっと踏み込んで言うなら、
家づくりの予算を計画する前にこれから必要となるコストを知り、
その備えをしていくために現在の状況を見直すべきだと思っています。
 
家にかける予算を失敗してしまうと、
間違いなく一生かかっても取り戻すことが出来ません。
それどころか不測の事態が起こった場合、
家を手放すことになるかもしれません。
 
なので「みんながそうしているから」という理由だけで、
同じような選択をするのは絶対にやめていただければと思います。
家を建てることが目的ではなく、
家は家族が幸せになるための一つの手段であることを
決して忘れないでください。

【おうちづくりコラム】図面の正しい見方 その2

家の間取りを考える時、
動線や広さばかりに気を取られがちになるのですが、
周囲の環境も同時に考えなければいけません。
 
というのも、
砂漠の真ん中にポツンと家を建てるわけじゃなく、
基本的に家に囲まれた環境の中で家を建てるからです。
 
つまり、家はその土地が持つ環境、
言い換えるなら近隣との兼ね合いを考えながら
間取りを考えるべきだということなのですが、
これを怠ってしまうと、
暮らし面や金銭面においてなんらかの支障が生じることになります。
 
例えば、南向きの土地では
出来るだけ全ての部屋を南向きでつくるのが一般的ですが、
ここで考えて欲しいのが、
その家で実際暮らした場合どんな風にして暮らしそうなのかです。

26494682_s.jpg
 
まず、リビングは
道を行き交う周囲の人たちから丸見えになってしまうため、
それを防御するためにカーテンが必需品となります。
結果、リビングはまだしも
奥の方に配置されるキッチンにはほとんど光が届かないため、
日中ずっと照明なしではいられないキッチンが出来上がってしまいます。
 
また、リビングから続くウッドデッキも、
道路を行き交う人たちから常に丸見えの状態となりますが、
さて、こんな場所で落ち着いてバーベキューが楽しめるでしょうか?
リクライニングチェアーに座ってひなたぼっこが出来るでしょうか?
子供たちはまだしも、自分たちも水着になってプールが出来るでしょうか?
 
このように南向きの土地に建つ家の多くは、
プライバシー性が低くなってしまうのですが、
それと同時に防犯面も悪くなってしまいます。
 
1つ目の理由が、窓を見ただけで間取りがほぼ完璧に分かってしまうから。
そしてもう1つの理由が、夜、電気がついているかいないかで、
どこに誰がいるのかまで分かってしまうからです。
 
そんなわけで、
南向きの土地でこのような設計をしてしまった場合、
外構工事に想定外のコストをかけて、
これらを緩和するという方法を取らざるを得なくなります。
目隠し、植栽、塀を強固につくることによって。
 
それゆえ、計画した予算から大幅にはみ出ないようにするためにも、
また、より暮らしやすい住まいをつくるためにも
そもそも環境を配慮しながら間取りを考えるべきだ、
というわけなんですよね。

24869023_s.jpg
 
✔️日当たりが悪い土地なのに?
 
そして、この南向きにリビングをつくるという当たり前は、
日当たりが悪い土地でも最悪の状況を引き起こします。
南向きに窓をつくっても前に建つ家によって光が遮断され
窓から充分な光が入ってこないからです。
 
さらに、この家は
前に建つ家の裏側を見ながら毎日過ごすことになるため、
違う意味でカーテンが必需品となります。
なんせ、勝手口やゴミや給湯器や室外機や汚れた壁を見ながら
過ごさないといけなくなりますからね。
 
それゆえ、どう考えても日当たりが悪い土地では、
前に建つ家に隣接した場所に
陽光を採り込みたいリビングなどを配置すべきではないんですよね。
 
でも現実は、常識に囚われるあまり
そして動線や広さばかりに気を取られるあまり、
こんな状況になってしまっている家がたくさんあります。
 
なので、家の間取りを見る時は、
その周りの環境を想像しつつ実際その家の中に立ったつもりで、
周りから自分の家がどう見えるのかまで
俯瞰しながら見るようにしていただけたらと思います。
 
これが出来れば、間取りに対する考え方が少し違ってくるはずですから。 
ぜひ参考にして下さい。

【おうちづくりコラム】図面の正しい見方

プリントアウトされた図面を見るということは、
上から間取りを見下す形で見るということなのですが、
この状態で間取り図と睨めっこをしていると
家のコストが上がりやすくなります。
 
この視点から図面を眺めていると、
なんだか部屋や収納が狭いような気がしてくるし、
収納に至っては数も足りないような気がしてくるからです。
つまり、それらの不安を解消するために
家の面積が大きくしがちになってしまうというわけですね。
 
収納に至っては、
現時点での自分たちの持ち物を十分に把握出来ていないとなると、
なおのこと「これで大丈夫だろうか?」という不安に
頭の中が支配されてしまうでしょうしね。

というわけで今回は
図面の正しい見方と言いますか、
「収納」の正しい見方についてお伝えしていきたいと思います。
 
「とにかく収納はたくさん欲しい」というのが
多くの人に共通した要望ですが、
収納を増やしたとてそれだけで収納力が上がるわけじゃなく、
その一方でコストだけは順調に上がってしまうので、
そんな無駄なことを防止するためにも
ぜひプランへと進む前に知っておいて下さい。

27224092_s.jpg
 
✔️床の広さは重要ではない
 
収納は「床」の広さだけで分量が決まるわけではなく、
「壁」の広さによっても分量に大きな違いが生じます。
 
例えば、幅と奥行きがどちらも91cmの収納と
幅が2倍で奥行きが半分の182cm×45.5cmの収納は
床の広さは全く同じですが、そこに置ける分量は
棚の枚数が同じ場合、単純に2倍違います。
 
布団以外の荷物はほぼ全てと言っていいぐらい
そんなに深い奥行きを必要としませんしね。
 
もちろん、奥行きが深い収納も
前後2列に陳列すれば2倍の収納力にはなるのですが、
ここで問題になってくるのが、
前後2列に並べて荷物を置かないといけない収納は
使いやすいのかということです。
 
奥の荷物を取り出すために
わざわざ手前の荷物を一旦退けないといけないし、
この置き方をしていると、
奥に何を置いているのか分からなくなりやすいでしょうしね。
 
そんなわけで、収納は管理しやすくつくるというのが鉄則であり、
そのためには奥行きよりも棚の長さに重点を置いて考えるべきなのですが、
コストを無駄に上げることなくそれを実現する最良の方法が、
「壁」の数を最大化するということなんですよね。
 
なので、図面を見る時は収納が一体どれだけの広さなのかではなく、
一体どれだけの壁があるのかに着眼していただけたらと思います。
 
✔️回遊動線のメリットとデメリット

4674376_s.jpg
 
また、収納の分量が気になる方がやらない方がいいのが回遊動線です。
玄関からリビングダイニングキッチンに直接行けると同時に、
収納~脱衣~洗面を通してリビングダイニングキッチンに行けるようにした
いわゆるグルグルと家の中が回れる動線のことですね。
 
理由は、収納を通り抜けることが出来るということは、
イコール収納の中に通路が出来てしまうからです。
 
つまり、収納の中の壁量がそれだけでガクンと減ってしまい、
通り抜け出来ない場合の半分以下の収納力になってしまうということですね。
その上、ドアの数が1枚増えるし、スイッチの数も1つ増えるため、
コストは上がってしまいますしね。
 
洗面や脱衣に関しても、
通り抜けにすれば入り口が2ヶ所になってしまうため、
ドアとドアがかち合う可能性が高くなり使いにくくなるかもしれないし、
これを避けようとしたら余分な廊下を増やさざるを得なくなり、
無駄にコストが上がってしまうだけですしね。
 
なので、インスタや見学会などで回遊動線や通り抜け動線を見て、
その利便性の良さに憧れを抱くかもしれませんが、
「陽」の部分だけじゃなくその裏に隠れた「陰」の部分にも
目を向けられるようにしておいてもらえたらと思います。
 
この見方が出来るようになれば、
収納に対する不安を解消するために
無駄に収納を広げる必要がないことが分かるし、
他の部分にも応用すれば、
無駄なコストをガンガン削ることが出来るようになるので、
ぜひ覚えておいて下さいね。