【おうちづくりコラム】スペックの基準

脱炭素の流れに伴い、
住宅の高性能化が著しく進んできたここ数年ですが、
正味の話、若干行き過ぎた感が否めないなと感じている方も
少なくないのではないでしょうか。

また、どこに行っても性能の話をされるものの、
どこも同じような話ばかりだし、
その違いもイマイチ理解出来ないため
その説明にうんざりしている方も
少なくないのではないでしょうか。

というわけで、
今回は業界の中で加熱し過ぎている
「オーバースペック(過剰性能)」
についてお伝えしていきたいと思います。

要は、お施主さんが最高の形で暮らせるぐらいの
ハイスペック(高性能)を備えておくのは
プロとして当たり前のことですが、
それを超えた「オーバースペック」は、
不要だと言っても過言ではない
というのが個人的な意見なので、
その理由についてお伝えしていきたいと思います。

27743913_s.jpg

✔️オーバースペックとは?

ウィキペディア曰く、
「オーバースペック(過剰性能)」とは、
利用者が求めるよりもさらに高く持っている性能と、
その性能を持つ機械の総称ですが、
過剰という言葉が指し示す通り
利用者にとっては不要なものだし、
多くの場合「宝の持ち腐れ」になってしまっていると思います。

「いやいや、そんなことないでしょ!
施主が求めている以上のものを搭載してくれているのだから
素晴らしいじゃないですか!」

このようにお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、
ハッキリと申し上げると、
お施主さんが求めている以上のものを搭載するために
かけるコストが絶望的に無駄だと思っています。

そもそも平屋にすれば、
99.9999%必要じゃない「制震ダンパ」
これだけでも40~50万円の負担増です。

また、この地域では、
「UA値0.87」という数値さえクリアしていれば
最高クラスの断熱性能を備えているし、
あるいは「0.6」という数値をクリアしていれば、
ZEH基準すらもクリアしていて
超快適に暮らしていけるにも関わらず、
なぜかその遥か上を行く北海道級の数値を標準にするという
謎の快適性の追求。
なのに、空気の循環を遮る「廊下」を大量につくるという
矛盾だらけの提案をする住宅会社。

この2つの要素を兼ね備えているだけで、
100万円~200万円はコストの無駄を
叩き出しているのではないでしょうか。

22447642_s.jpg

この他、200万円~300万円ほどする全館空調システムなんかも
体感したら「これ欲しいー!!」となりやすいアイテムですが、
これだって確実に製品寿命がやってくるので、
後々のメンテナンスコストまで踏まえると
かなり大きな負担増になるのではないでしょうか。

そんなわけで、
住む人のためにというよりは
むしろ他社との差別化のためだけに、
お施主さんが負担するコストを犠牲にしてまで
「自社の強み」を作り出すのは間違った考え方ではないか
と思っている次第であります。

現在は、木材をはじめとした原材料費の高騰によって
かなり負担増になっているので、
本来私たちはコストを抑える工夫や提案をすべきですからね。

A-1様邸 1-2.jpg

✔️活かすも殺すも間取り次第

私たち住宅会社は、
お施主さんが最高の状態で暮らせるように
ハイスペックを備えておく必要はありますが、
コストを犠牲にして
それ以上の「オーバー(過剰)スペック」を備えるのではなく、
そのハイスペックを活かす間取りを
考えることが大切ではないでしょうか。

先程お伝えした「制震ダンパ」は
平屋にすれば設置する必要すらありません。
また、平屋にしつつ空気を遮断する廊下をなくせば、
体積も小さくなり冷暖房効率が格段に高くなるので、
過剰な数値を追いかける必要もありません。
かつ、平屋にすれば階段による
上下階の温度差が生まれなくなるので、
全館空調システムだって必要なくなります。

つまり、間取りによって
暮らしの中で起こる問題を解決することさえ出来れば、
不用意にコストを上げることなく
最上級に暮らしやすい住まいを提供することが出来るというわけですね。

なので、オーバースペック(過剰性能)は
確かに魅力的に感じるかもしれませんが、
それは確実にコストに跳ね返るということ、
そして、そんなことをしなくてもいい間取りさえ出来れば、
一般的なハイスペック(高性能)住宅で
充分過ぎるぐらいだということを
覚えておいていただけたらと思います。

【おうちづくりコラム】コスト調整の秘策

一生に一回の家づくり。
であれば、なるだけ後悔がないように、
予算が許す限りは出来るだけやりたいことを詰め込みたい!
誰もがそうお考えになると思います。

どっこい、
そう上手くいかないのが家づくりの困ったところ。

たいていの場合、
予算と要望の間には大きなギャップが生まれ、
予算にその皺寄せがいくというパターンが圧倒的に多い
というのが現実です。

というわけで今回は、
やりたいことの皺寄せをなるだけ予算にいかせないためには
どのように考え、どのように対処していくべきなのかについて
具体的にお伝えしていきたいと思います。

結論としては、
「何か1つだけで解決するのではなく合わせ技によって解決しましょう」
ということであり、
そのためには今回お伝えする知識が絶対に必要なので、
最後までお付き合いいただければと思います。

25320115_s.jpg

✔️小さなことをコツコツと!

例えば、家を建てるにあたって
どうしても床暖房をキッチンとダイニングとリビングの
3箇所に設置したいとなった場合、
無垢の床を使用しているとしたら、
そのグレードアップ費用まで含めると
約80万円コストアップするのですが、
そうは言っても家の予算は上げられないとしたら、
このアップ分をなにかを減らすことによって埋めなければいけません。

この場合、1.5坪(=3帖)ほど
1階の面積を削れば相殺できることになるですが、
いざ、それを実行するとなると
そう簡単に削ることが出来ないのが現実です。

無駄な廊下がたくさんあれば一瞬で解決ですが、
そうじゃない場合、1階の3帖はとっても貴重ですからね。
それによって1階にファミリークローゼットが
作れるか作れないかってことになってくるわけですからね。

なので、面積だけに集中するのではなく、
家に使われている材料が減らせないかにも同時に着目することが大切です。

2066627_s.jpg

1つは「窓」の数です。
外に出られる大きな窓なら1本あたり12万円~15万円するし、
小さな窓でも1本あたり4万円~5万円しますからね。

なので、大きな窓を減らしその分小さな窓に出来ないかとか、
あるいは、そもそも大きな窓の数を減らせないかとか、
かつ、同時に小さな窓の数も減らせないかということを
同時に検討してみることも大事かと思います。

窓を減らすことが出来れば、
カーテンなしでは過ごせない家の場合、
同時にカーテン代までカットすることが出来るわけですからね。

続いて着目していただきたいことが家の中のドアの本数です。
ドアも1枚あたり4万円~5万円するし、
引き違い戸やクローゼットの折戸に至っては、
1箇所だけでドアが2、3枚必要ですからね。

ゆえ、個室ごとにクローゼットが必要なのか、
クローゼットは必要だとしてもドアは必要なのか、
ホントはドアがない方が便利なのに
ドアを設置してしまっていないか、
なども同時に考えていただくといいかと思います。

そして仮に窓で15万円ほど削減出来て、
カーテンで10万円ほど削減出来て、
ドアで15万円ほど削減出来そうだとしたら、
その分、カットしなければいけない面積は
先程の半分で済むということになりますからね。

少ない窓でも採光さえキッチリと取れるのであれば、
窓が減り、壁が増えることによって
耐震性も断熱性もアップするわけですしね。

28002977_s.jpg

また、家だけでコストの調整を考えるのではなく、
土地に分散してみてもイイかと思います。
仮に、建てようと思っている家が2階建てだとしたら、
55坪ぐらいの土地を買おうとしているのを
50坪にするといった感じですね。
あるいはもっと削らなければいけないとしたら
45坪ぐらいまで削るといった感じです。

この場合、土地の坪単価が15万円だとしたら
5坪削れただけで75万円安くなります。
となると、家のコストは一切削らなくても
よくなるかもしれません。

あるいは、10坪まで削れたとしたら150万円安くなるので、
床暖房に加えて、巷で人気の衣類ガス乾燥機や
海外製の食洗機を設置出来るかもしれません。

まー、口で言うのは簡単ですが、
実際はこんなに上手い具合には
なかなかいかないものなんですけどね。

とはいえ、
こういったコストダウンの方法を頭で理解出来ているのと
理解出来ていないのとでは全く違うと思うので、
本当にやりたいことを実現していただくためにも、
こんな方法もあるんだよということを
ぜひ覚えておいてもらえたらと思います。